質問の要旨
- 旧姓の通称使用を法制化するだけで、改姓による不利益を解消できるのか?
- 夫婦同氏制度による改姓の負担を、個人の尊厳と男女平等の観点からどう捉えるのか?
- 選択的夫婦別姓制度を導入し、法制審議会の答申を法改正へつなげるのか?
政府答弁
- 政府側は、旧姓の通称使用を法制化する取組と、夫婦の氏に関する議論をそれぞれ進める考えを説明。
- 政府側は、最高裁判決や社会状況、国民の意見を踏まえて夫婦の氏の制度を検討する立場を説明。
- 政府側は、夫婦の氏に関する制度は国民生活に関わるため、国民各層の意見や国会での議論を注視する考えを説明。
残った争点
- 通称と戸籍上の氏を併用する負担を減らせるか、選択的夫婦別姓を求める当事者の課題に応えられるかが確認点。
- 改姓の負担が女性に偏る実態を是正し、婚姻時の選択をどのように保障するかが残る論点。
- 制度導入の是非と、長期間実現していない法制審議会答申をいつ法改正へつなげるかが残る論点。
発言の流れ
旧姓使用との違い
4発言○打越さく良君 立憲民主・無所属の打越さく良です。
大臣の所信では、旧姓の通称使用の法制化を後押しするくだりがある一方、選択的夫婦別姓の実現に向けた決意を聞くことはできませんでした。大臣、旧姓の通称使用の法制化が選択的夫婦別姓を望む人の願いに沿うものだと胸を張って言えるでしょうか。
三月十八日、選択的夫婦別姓の実現を求めて法務大臣を被告として訴えている訴訟の口頭弁論が東京高裁で行われました。この日、原告のお一人は、旧姓使用の法制化は、喉が渇いて水が欲しいと言っている人に塩水を飲めと言っているようなものと語りました。水と塩水では、見た目は同じかもしれません、でも、当事者にとっては同じわけがありません。当事者の渇き、願いに応えるものでは決してないのです。
大臣、喉が渇いて水が欲しいと言っている女性たちに塩水を飲めと言い続けるおつもりでしょうか。
○国務大臣(平口洋君) 旧氏使用の法制化は、これまで政府が二十年以上にわたって進めてまいりました旧氏使用の拡大の取組をより一層進めるものであります。これによりまして、婚姻等による氏の変更によって社会生活で不便や不利益を感ずる方を更に減らすことができると考えております。
これに対して、選択的夫婦別氏制度の導入は、こうした取組とは全く異なる課題であると認識しております。御指摘のように、選択的夫婦別氏制度の導入を求める声があることは承知をしておりますが、この点については現在でも国民の間に様々な意見があるため、国民各層の意見や国会における議論の動向等をよく踏まえる必要があると考えております。
○打越さく良君 塩水を飲めと言い続けるということと理解しました。
そもそも、なぜ選択的夫婦別姓の議論が始まったのでしょうか。言わずもがなと思っていましたが、振り返らざるを得ません。
一九九一年五月、今から三十五年も前に、婦人問題企画推進本部が、西暦二〇〇〇年に向けての新国内計画一次改定を発表しました。そこには、男女平等の見地から、夫婦の氏や待婚期間の在り方等を含めた婚姻及び離婚に関する法制の見直しを行うと明記されていました。これに呼応して、法制審議会が一九九一年に夫婦同姓などの民法の規定につき見直し作業を開始したのです。
出発点は男女平等です。ところが、今なお夫婦同姓しか許さない制度の下、九四%もの夫婦が夫の氏にしています。戦後民法七百五十条の下で夫婦同姓が規定されてから一貫して一〇〇%近くが夫の氏にしています。これは決して偶然ではありません。結婚すれば女性が改姓するのは当然だという社会構造、さらには、この夫婦同姓そのものが男女不平等をつくり出しているんです。
仮に旧姓の通称使用の法制化が実現しても、この不平等はそのままに決まっているじゃないですか。大臣が所信で言った旧姓の通称使用の法制化では、ほぼ一〇〇%の夫婦で女性が改姓を余儀なくされ続ける。大臣、男女不平等のままでいいというんでしょうか。
○国務大臣(平口洋君) 御指摘のように、価値観の多様化に合わせまして、選択肢を増やす観点から、選択的夫婦別氏の制度を求める声があることは承知をいたしております。
夫婦別氏制度を定める民法第七百五十条については、夫婦同氏制度を定める民法第七百五十条については、平成二十七年の最高裁大法廷において、その文言上性別に基づく性的な差別的取扱いを定めるものではない、夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても、それが規定の在り方自体から生じた結果であるということはできないといたしまして、憲法十四条一項に違反しない旨判断されているものと承知をいたしております。
そのため、現行の夫婦同氏制度により男女不平等が生じていることを前提とする御指摘は当たらないものと考えております。そして、このことは、現行の夫婦同氏制度を維持した上でお尋ねのように旧氏使用の法制化がされた場合でも異ならないものと考えております。
個人の尊厳と男女平等
2発言○打越さく良君 その大臣が今おっしゃった二〇一五年の最高裁大法廷、その判決、私は弁護団の事務局長として多くの女性たちとともに涙をしながら聞きました。圧倒的に多数の夫婦で女性が改姓を余儀なくされている状態が、それが形式的に男性でも女性でもいいことになっていても、平等と言えるのか、耐え難き不平等ではないかということがずっと指摘され続けているわけです。
そしてまた、先ほども大臣は、国民各層の意見と言いました。政府は、長年、世論を理由、口実にして選択的夫婦別姓を妨げてきた。しかし、世論が容認に傾くや、次なるマジックワードとして国民各層の意見というものを言い出したわけですね。でも、その国民各層の意見って何なんですか。もうこの圧倒的不平等な状況を維持して構わないんだという国民のある層の方たちと、私は塩水ではなくて水を飲みたいんだと、私の尊厳を何とか、何とか支えてほしい、そうした法制度であってほしいという女性たちの声と、国民各層の意見様々ですけれども、どうして、個人の尊厳を尊重しないような意見と、個人の尊厳を尊重してくれという意見と、どうして後者の方を優先しないんですか。
国民各層の意見が多様だからこそ、選択的夫婦別姓、選択制を認めるべきではないでしょうか。
○国務大臣(平口洋君) そのような声があることも承知をしておりますが、他方で、戸籍上の氏まで夫婦、親子で別にすることにつきまして、子供への影響などの観点から懸念を示す声があるものと承知をいたしております。
最近の多くの世論調査を見ると、現行制度の維持、旧姓の通称使用の拡大、法制化、夫婦別氏制度の導入の三者択一で選択、調査した場合には、旧姓の通称使用の拡大、法制化を選択する割合がやや高くなる傾向にあると承知をいたしております。そのため、選択的夫婦別氏制度の導入の是非については、国民各層の意見や国会における議論の動向等をよく踏まえる必要があると考えております。
制度導入と法制審答申
4発言○打越さく良君 その世論を確認するに当たっても、質問項目自体変えてしまったじゃないですか。法務省の方が保守派との関係でもたないということで、世論を時間的に、継続的に経年変化を見るというその意義を捨てて、世論を、変えて、まだない旧姓の通称使用という問題がまるでクリアされたような、そんな誘導する質問項目を作ったわけじゃないですか。今の答弁は余りにもひどいと思いますね。
そして、あと、子供のこともおっしゃいましたけれども、既に親子別姓の家族はたくさんいるわけですよ、国際結婚とか。あるいは、世界各国でも、もう日本以外は選択的夫婦別姓認められているんですから、そうした家族の下での子供に対する偏見丸出しじゃないですか、今の答弁は。
そして、同性婚に関する質問でも、政府はコピペのように国民各層の御意見を注視するという答弁を続けていらっしゃる。注視するということは何もしないということで、余りに無責任です。五つの高等裁判所が同性カップルの結婚を認めない民法の規定を違憲と既に判断している。唯一の合憲判断となった東京高裁判決ですら、このままの状況が続けば、憲法第十三条、第十四条第一項との関係で憲法違反の問題が生じることは避けられないと述べています。
立憲民主党は、選択的夫婦別姓を実現する法案も、同性婚を認める婚姻平等法案も提出してまいりました。衆議院の解散で廃案になってしまいましたが、速やかに提出したいと考えています。
しかし、本来法務省にとって三十年も前からの宿題である選択的夫婦別姓、先ほど再審法について大臣は法制審から答申があったっておっしゃいましたけれども、三十年も前に選択的夫婦別姓については法制審から答申があって、その宿題を放置しているじゃないですか。その選択的夫婦別姓についても、違憲判断が重ねられてきた同性婚についても、もう法務省はこの国会でも何もしないんですか。速やかに閣法を提出するべきではないでしょうか。
○国務大臣(平口洋君) まず、選択的夫婦別氏制度の導入については、国民各層の意見や国会における議論の動向等をよく踏まえる必要があると考えております。
法務省としましては、第六次男女共同参画基本計画等に基づき、旧氏使用の拡大について関係省庁と連携して必要な検討を行っていきたいと考えております。
以上でございます。
○打越さく良君 大臣、私、質問ですね、違う質問しているので、同じ答弁をなさらないでいただきたい。
そして、大臣もかつて多様な幸せが尊重されるべきだと正しく考えていらしたじゃないですか。二〇二四年の衆議院選挙の際、毎日新聞の候補者アンケートでは、大臣は、選択的夫婦別姓についても同性婚についても賛成と回答していらっしゃいましたよね。
個人の尊厳と男女平等
2発言○打越さく良君 実現すべき責任を負うポストに就かれたら、二〇二六年の衆議院選挙の同じ候補者アンケートでは無回答ですよ、大臣は。本当、これ余りにも無責任ではないでしょうか。
私が担当した第一次夫婦別姓訴訟の原告のお一人、塚本協子さんは、二〇一九年、八十四歳でお亡くなりになられました。自分の姓で生き、逝きたい、自分の姓で、塚本という姓で死にたいと、その願いはかなうことはできませんでした。
同性婚訴訟でも、東京原告の佐藤郁夫さんは、二〇二一年お亡くなりになっている。仙台家裁の申立人小浜耕治さんのパートナーは、二〇二六年お亡くなりになっています。
大臣、人の命には限りがあります。生きているうちにそれぞれの幸せを尊重する法制度を用意しなくてどうするんですか。限りある命の、その個人の尊厳の問題であると、多様な幸せを尊重する、その責任のあるお立場だと、その認識はあるんでしょうか。
再度申し上げます。同じ答弁はやめてください。真摯に向き合っていただきたいんですね。限りある人生を生きているお一人お一人の多様な幸せを尊重する法制度にする、その決意をおっしゃってください。
○国務大臣(平口洋君) 平成八年に法制審議会が答申を行った選択的夫婦別氏制度については、現在でも国民の間に様々な御意見があるものと承知をしております。
また、同性婚制度は、国民生活の基本に関わるものであり、国民一人一人の価値観とも密接に関わるものと認識をしております。
引き続き、国民各層の意見、国会における議論の状況を踏まえまして、選択的夫婦別氏制度についてはその対応を検討していく必要があり、同性婚については、そのような違憲状況のほか、同性婚に関する訴訟の動向というものもありますので、これらを注視していく必要があると考えております。