発言の詳細
防衛費増額と国民負担
1発言○窪田哲也君 公明党の窪田哲也です。
私は、会派を代表して、政府提出の令和八年度予算三案に反対の立場から討論をいたします。
米トランプ政権が突如始めたイラン攻撃によって、中東にエネルギーを依存する各国は大混乱に陥り、平和と民主的秩序は試練に立たされています。そうした中で、国民の命と暮らし、幾世代にわたって受け継がれてきた社会の営みをどう守り抜くのか、その責任と覚悟が一人一人の政治家に厳しく問われています。
予算案に入る前に、中身に入る前に、まず触れざるを得ないのは、審議に臨む政権の姿勢です。圧倒的な数の力によって、衆議院においては、財政民主主義を軽視する姿勢が指弾されました。また、文部科学大臣の醜聞等によって、その真相解明のために時間を費やさざるを得なくなったのも誠に残念です。
以下、政府案に反対する理由を述べますが、理由は単純明快です。本予算案がイラン攻撃の勃発前に編成されたものであり、世界情勢の急激な変化に対応できていないということです。
備蓄石油の放出や基金残高を用いたガソリン補助金の再開など、当面の対応は実施されています。しかし、その補助額は、一か月当たり五千億円程度と試算されていると伝えられ、現状では財源となる基金が二か月程度で枯渇するのではないかとの危惧も生じています。政府の対応は心もとない限りであり、共同通信がさきに行った調査でも、政権の原油不足対応に対し、無党派層の六三%が不十分と評価しているではありませんか。
イラン情勢の鎮静化が見通せず、その影響が長期化することを考えれば、国民生活の予見可能性を高めるため、ガソリン、軽油、灯油、重油、航空燃料の価格引下げ、また今後引上げを予定、予想される電気・ガス料金の引下げのための十分な財政措置を早急に講じる必要があります。とりわけ、今般の基礎控除等の引上げによる恩恵が及び難く、物価高の影響を強く受ける低所得者に対し、早急に手を打つべきと考えます。
そのように原油高、物価高が国民生活に重くのしかかる中で、昨年見送った防衛増税を今年実施することに合理的根拠が見出せません。戦後最も厳しい国際環境に、安全保障環境にある中、必要な防衛財源を確保するのは当然です。しかし、法人税、たばこ税の税収増によって必要な防衛財源が賄える見込みがあるにもかかわらず、今このタイミングで防衛増税に踏み切ることは、到底国民の理解が得られるものとは思えません。
さらに、イラン情勢の影響を受け、必要な医療確保に暗雲が垂れ込めています。ナフサの供給減や価格高騰によって、注射器や点滴、輸液用バッグ、各種チューブ、カテーテルなど命を守るための機材が高騰あるいは供給不安に陥り、患者団体などは資材の切れ目が命の切れ目になってしまうと悲痛な声を上げているではありませんか。必要な医療の確保という点でも、本予算案は不十分であります。
加えて、予算委員会での審議を通じ、公明党は高額療養費制度の自己負担限度額引上げを問題視し、これがいかに非条理であるかを厳しく追及しました。政府は患者団体からの意見を慎重に聞いた上で引上げの判断を行うことを約束していたにもかかわらず、意見聴取が不十分なまま限度額引上げが強行されようとしています。
以上のような経緯から、公明党は立憲民主党と共同で修正案を提出しましたが、予算委員会で否決されました。
修正案は、暮らしを守るための原油高・物価高対策として、ガソリン、軽油、灯油、重油、航空燃料の価格引下げで一兆八千億円、電気・ガス料金の引下げで一兆五千億円、低所得世帯向け給付金で五千億円を、また、高額療養費制度の自己負担限度額の引上げ凍結に三百億円、ナフサの供給減、価格高騰を受けた医療機関支援に五百億円で、計三兆八千八百億円とするものでした。
歳入増としては、積み過ぎ基金の国庫返納で三兆九千百八十億円を、復興財源に三百八十億円を確保する一方、防衛増税凍結による歳入減三百八十億円とするものでした。三年ルールを超えて措置されている積み過ぎ基金の一部を国庫返納させることにより、特例公債を増発することなく、命と暮らしを守る施策のための財源を確保すべきであると考えます。
鎮静化の見通しが立たないイラン情勢を受け、私たち政治家に課された使命は、どこまでも理想と理念に基づき、徹した現場主義と現実主義により国民の命と暮らしを守り抜く姿勢です。その点、十分な審議が行われなかった衆院に対し、本院で一定の充実審議が行われたことは、与野党の垣根を越えて、本院の面目躍如と言えるのではないでしょうか。
最後に申し添えます。
高市政権は、今後、国論を二分する政策を推し進める考えを示されています。確かにその姿勢は勇ましく、時にリーダーに求められる理想の姿でしょう。しかし、逆に国論を二分する政策だからこそ、先人たちが築いてきた歴史と伝統を踏まえ、国民に対して粘り強く丁寧に説明し、理解と納得と共感を得ながら、多くの国民を包み込んでいく包摂的な姿勢こそが政治のあるべき姿ではないかと申し上げ、討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)